7月30日 いよいよ船へ

今日は朝から忙しい。荷物をまとめて船へ乗る。大きな船なので乗客も多い。乗船までにかなりの時間がかかった。乗り込んだ途端、あひるみたいな着ぐるみを来た乗員にだきしめられてしまった。日本人は小柄なので子供と間違えられたのかも。それとも空色のTシャツと白いクロップ・パンツが親近感をいだかせたせいか?

今回のクルーズは貸しきり船ではなく、ピレウス港から出ている定期観光船を利用したもの。船籍はマルタになっていた。ピレウス港自体はギリシアの財政難が災いして中国資本にのっとられ、共産主義・中国が支配していると言うのに労働条件が悪化しているという。

  

 さすが海洋民族国家の港だ。大型の観光船も沢山いた。                舳先に集まる乗客の群れ
                              離岸、接岸時は船腹からコントロール

それはともかく、私達は船好きなので、はじめてのクルーズにおおはしゃぎ。船が港を出るまで甲板を走り回り、甲板でデッキ・チェアに寝そべってみたり。そうこうするうち海難事故に備えての訓練が始まった。

 

     我らのルイス・オリンピア号           救命ボート          避難訓練も行われた

それでは船内をご案内いたしましょう。


甲板には海水プール 舳先と艫に軽食堂    船内のエレベーター    食堂もあちこちにある

船は移動するホテルのようなもの。寝ている間に寄港地につく。だが最初は船の中の構造よりも初めてのエーゲ海観察に夢中になってしまった。(クルーズの唯一の難点は、部屋の位置によってはエンジン音がうるさいことだ。起きているうちはともかく絶え間なくひびくゴンゴンゴンゴンという音。三日目あたりからはなれてしまって睡眠の妨げにならなくなったけど。もっと高価な部屋なら、音も静かで、バスタブつきらしい・・・)

オデッセウスの昔から

幼いころホメロスの子供向けの叙事詩を読み、高校時代に、隻眼の巨人の目に燃え盛る槍を突っ込んで逃げ出すオデッセウスの映画をみてから幾年がすぎたか・・・(結構凄い迫力がある映画だった。フィルム・カメラ、No CGの昔あれだけのf映画が作れたのはすばらしい!!)今回エーゲ海クルーズに参加したいと思ったのは、主として塩野七生さんのローマ人の物語をはじめとする数々の小説に影響を受けたためだが、航海する間にオデッセウスの時代の地中海世界のにも興味を再び抱きだしてしまった。

  

抜けるような青空の下、乾燥した大地。日本の島とは大違い。 風も激しく吹き続ける。沢山の白い波頭が見える。これでも冬とは比較にならぬ穏やかさなのだという。

オデッセウスはトロイ戦争の勝利の後、海神ポセイドンの怒りをかって長年月地中海を漂流させられたと書かれているが、それはポセイドンの怒りのせいではなく、風の強さ、海流の複雑さ(多島海のせい?)が真の原因なのではないだろうか?

ガイドさんの説明によると、昔のギリシア(と言っても人々が神話を信じていた時代)は森に恵まれ、水にも恵まれていたという。それで、二体の神(知恵の女神アテネと海神ポセイドン)からいずれを守護神にするか選択を迫られたとき、当時のアテネ市民は水をプレゼントするというポセイドンを選ばず、オリーブをプレゼントすると言ったアテネを選んだそうだが、今にして思えばアテネの市民は選択を誤ったのではないかと思ってしまう。

又、ある学説によると、燃料としての木を切りすぎ、森を失ったせいでギリシア文明は滅んだという。(いわゆるエネルギーの枯渇説)現代の旅人の目で見るとギリシアは昔から乾燥した地だったのではないかと思われので人為的な原因(森林資源枯渇)によりギリシア文明が滅びたのだといわれても納得しかねる。いずれにせよ、衣食足りずに文明を存続させることはできない。いわゆるギリシア文明は古代に終焉を迎え地中海の数々の殖民先で花を咲かせたようだ。

ギリシアの人間尊重と理性尊重精神を葬り去られた暗黒の中世の後でルネサンス(ギリシア・ローマの文化の再生)が花開いたのは本家本元のギリシアではなく、イタリアにおいてであった。現代の貧しいギリシアを見ていると昔日の栄華を信じることは難しい。ローマ帝国やオスマントルコ帝国の一部であり続けたギリシアが独立国家となったのは第一次大戦後であるという。そのせいでギリシアは自国の言語を失ってしまった。現代ギリシア語はスラブ系の言語で代数や幾何、科学の世界で今なおいき続けている古代ギリシア語とは似て非なるものだそうだ。

ミコノス島への旅

  
風が強いので発電用の風車が多い。            海には沢山の白兎が終始飛んでいた。

この強風の中、私は甲板で行われた卓球の大会に出たが、アメリカの少年に完敗してしまった。試合が終わった後、ドイツ人の幼い少年が卓球をやりたがり、少し相手をしていたら、その子のお母さんがわが子の挑戦に喜んだのか8ミリで撮影し始めた。スポーツは安易に国境をこえるものだ。しかし、揺れる船の上、強風の中での卓球とは・・・所詮暇つぶしである。今度の航海は大海を延々と行くわけではないので単調な航海ではないけれど毎日毎日船内の色々な場所で色々な時間つぶしのための企画が組まれていた。今残念に思うのは、ギリシアのダンス・ショーを見逃したことと、ギリシアダンスのレッスンを受けなかったことだ。

ギリシア人とダンス
地球の歩き方・ギリシア編によれば、「ギリシア人を知りたければ「その男ゾルバ」を見ればいい。」と書かれていたので、私は帰国後探し回って、ようやくTUTAYAのレンタル・サイトからそれを借り受け、見ることができたが、ギリシア人にとって踊りは不可欠のものらしいのだ。(私は、「その男・ゾルバ」に主演したアンソニー・クインが嫌いだったけれど、(多分「道」というフェッリーニの映画で、粗野で無知な男を演じたためだろう。「アラビアのロレンス」でも同じような役柄を演じていたし。)この映画を見た後では彼が好きになってしまった。

ミコノス島へ