シャッカ-3.
私が、イタリア、特に南イタリアを好きな理由の一つは
人々がすごく友好的、人懐っこい。
シチリアには、他人に興味を持ち、おしゃべりを
し出すと止まらない人達が多い。
何年か前に電車のコンパートメントで、
70代下町風おばあさんと、40代キャリアウーマンの
おしゃべりを横で聞いていた私は、疲れて倒れそうになった。
二人の話は、休みなく続き、ベルルスコーニの娘婿の話から、
トマトソースの作り方、おばあさんの一日のスケジュール・・・
と、延々続く。
何故、40代キャリアウーマンが、下町おばあさんの一日の
スケジュールに、そんなに興味をもつのか?と思うくらいに、
キャリアウーマンは、おばあさんに質問をする。
街で知り合いと出会うと一時間位の立ち話は、当たり前の人達なのだ。
Lianeは36年前シチリアへお嫁に来たドイツ人なのに、
すっかり、南イタリア人になっている。
彼女も一人旅なので、午後のプールとその後は、ほとんど一緒に過ごし
た。
夕方Lianeとジェラートを食べに行く。
彼女は、ウロウロしている子供達にチョッカイを出し、一時間ほど子供
達としゃべる。
ドイツ人の観光客を見つけると、彼女は私にドイツ人の見分け方を
教えてくれた。
・着ているものがイタリア人とは違う(ダサい)
・食事の時に無駄な話をしない。
・料理の注文の仕方にセンスがない。
確かに彼女の言うとおり、ドイツ人のグループ6人は
レストランで、誰かが "カルボナーラ" と言うと
他の人達も、じゃあ私も、私も、と全員がカルボナーラを
黙々と静かに食べていた。
さすがに、元ドイツ人 Lianeは、するどい!!
今は、おしゃれでおしゃべりな正真正銘のイタリア人。
そして、彼女はすごい仕切りたがりや。
私が、シャッカの後、トラーパニへ行こうと思ってる、
と言ったら、
"何言ってるの?その前にアグリジェントへ行きなさい!!"
と、私の予定を替えたがる。
プールサイドで私が日光浴しながら読書していると、
女性二人の話し声が、ずっと続いてた。
プールの中で立ち話をしている二人の話を聞いてると、
アメリカからグループで観光に来た50代女性は、以前ローマに
住んでいたらしく、イタリア語が話せる。
相手をしているのは、40代のシチリア出身で、結婚してベルギーに
住んでる女性。彼女は、ここシャッカの伯母の家へ遊びに来てる。
もうすでに、延々一時間ほど、どこのジェラートが美味しいか、
トマトソースの作り方などを話している。
私は、"へえぇぇ・・又、トマトソースの作り方かあぁぁ"
と、ニタニタ笑ってると、
"あなた、イタリア語わかるの?"
"ええ、少し解るよ"
"どこから来たの?どうしてイタリア語が解るの?"
と、私を巻き込んでのおしゃべりが続いた。
その時、Lianeが急に立ち上がって、
"なんて、素晴らしいプールなの!ここは。
こんなインターナショナルなプールは、見つけられないわ!!"
と仕切って、アメリカ人の旅行の予定を替えさせようとしている。
最後の夜はLianeと、港のおしゃれなレストランへ行った。
料理を決める時も、ウェイターと、ひとしきりしゃべって、
私の電子辞書を、ウェイターに見せて、
"彼女は日本人だから、辞書もテクノロジーなのよ。すごいでしょ。"
と、注文までに、約20分、ウェイターもおしゃべりに付き合う。
美味しいシーフードの夕食をしながら私達は、又シチリアでの再会を
約束した。
レストランを出ると、港のせいか、野良猫が沢山いる。
Lianeは猫達とも、おしゃべりをしていた。
しかし私には、日本で留守番をしてる、我が家の猫のミーチャンの事を
思い出した。
毎日エサをやりに行ってるはずの娘が、電話する度に機嫌が悪い。
あんなに、快くイタリア留学に賛成してくれていたのに・・・
どうも、猫のミーチャンが、すごく怒っていて、トイレ以外の場所で
ウンチをして、家がとんでもない状態になってるらしい。
娘に、もうええかげんに帰ってきたら?と言われていたので、
まだ、旅を続ける予定だったが、そろそろかなあ・・・・
と、猫と娘の怒った顔が、よみがえってきた。