ソクラでスの変心

 ソクラでス(よーくご覧下さい。ソクラテスではありません。)というのは私が勝手につけた私の連れ合いのあだ名です。

 賢明なる視聴者の皆様は(あれ、いけない。聞くことはできないんだ。でも、ノリがいいのでこれで行こう。)

 何故、かれがソクラでスというあだ名かご拝察のこととおもいますが念のためちと解説。

 ソクラテス曰く、「結婚しなはれ。良妻に恵まれれば、幸せな生涯を送れる。悪妻だったら哲学者にlなれる。」

 そう、私がクサンチッペ級の悪妻で有れば、彼も哲学者になれたのですが、少し悪妻度がたりませぬのと、いくらなんでも

 ソクラテス大先生の名をかたるのは不遜というものですからソクラでスということに。
 

 ベネちゃんが来た日、ソクラでスが少し遅く帰宅しました。彼、声をひそめて言うことには「ん、来たの?」。そして不審顔。

 「うん、きたよ。」と私。いよいよホスト・ペアレント生活の始まりってことで彼緊張のまなざし。

 (後で聞いたら、なぜ不審な顔をしたのかわかりました。ベネちゃんは格闘家がはくような頑丈な編み上げの革靴をはいてきた

  ものですから、イメージが狂ったようです。イタリア→おしゃれ→フェラガモのような靴で玄関が華やいでいると予想していた
  
 らしい。彼はフェラガモなんて知りませんが、要するにハイ・ヒール系の靴。)
 

 次の日の朝、ソクラでスが朝ご飯を食べていると、三つ編みにしたベネちゃんがさわやかな顔をして食堂に入ってきた。

 そしてほほえみながら「お誕生日おめでとうございます。」とソクラでスに言った。(奇しくもその日はソクラでスの誕生日でした。)

 その時でした。あれだけホームスティ受け入れに否定的なことをいっていた彼がころりと変心したのは。

 「男心と秋の空」ともうしましょうか。
 

 それからというもの、機会をみつけては、折り紙をおってみせたり、今や、家の中の誰もが見向きもしない手品を披露してご機嫌を

 取り結び、(彼女もすごく嬉しそうに笑ってましたね。もしかしたらそういう時間が一番楽しかったのかも。)何かというと「ベネちゃん、

 ベネちゃん」なんですよね。しまいには、12月に彼女が帰国したにもかかわらず、彼女と一緒にとった家族写真を年賀状にして

 配ったりして。私はあいた口がふさがらなかったです。
 

 変心の理由ですか?一に彼女が美人だったから。二に日本語が達者だったから。といっておりますけどね。うちの中では見向きも

 されなかった手品を懸命にみてくれたり、感心してくれたからかもしれませんね。
 

 彼のまたの名は「ステテコザウルス」。家の中では冬でもステテコ姿ですからね。でも、彼女がいる間は下着の上から私が

 買ってきた、紺色縮の作務衣風の上下(実はパジャマ)を着ていましたが、別に苦情もいいませんでしたね。

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