シエナ青春留学記(聞き書き)

私はindependenteな女性である。有能な女性が、男性の上司に、うまい汁を吸われるだけ吸われて、ガラスの天井に
頭をぶつけては血だらけになる姿を見過ぎた。だから今はフリー。

容姿はというと自分でいうのも何だが美女である。(注1)グラマーでもあるから言い寄られたことも数限りなくある。
でもシンゴラーレ。ありのままの自分を抑圧せずに共生できそうな相手をみつけられなかったからだ。

こんな私がイタリアに留学を思い立ったのは、あるイタリア語学校でショックな体験をしたからだった。

私は結構な年月、イタリア語学校に通ったし、仕事でイタリアに何度もでかけた。
でも、長年私たちのクラスを担当してくれた先生に放り出されて(遅刻や欠席が多いことに彼がやる気をなくしたという面も
否定できないが)別のクラスに無理矢理合流させられたときのこと。

同じ年月、勉強してきたはずなのに、何故かそのクラスの人はイタリア語を良く話すことができた。
そして、ヒアリングの能力も段違いにあるみたい。
帰国マダムばかりなら、そのくらいできたとしても何の不思議もないのだが、そうでないオバサンも、
旅行経験しかないおにいさんも、まだ独身といっても通るようなsignoraも口ごもりながらも自分の考えを伝える姿を見て
しまったから。

この差は一体なんなんだ?

教師のせいもあるだろう。でも、浴びるほどにnative speakerの言葉をきけば、挽回できるかもしれない。
こんな思いで私はイタリアに旅立ったのだった。

@出だしは良かった。いい先生だったから。ところが程なく先生が替わった。
    生徒が理解しているかどうかなどおかまいなし。私が留学したのはシエナ国立大学
    だが、私学ならもっと面倒見がいいという噂。

Aでも、留学の強みは何たって本場の雰囲気を堪能できること。午前の授業が終わると、
   図書館へ出かけたり、夜更けまで映画をみたり(先生達も語学習得のための映画鑑賞を
   勧めていた。)中世の壁を背にビールやワインを片手におしゃべりに興ずる。
  ダンスパーティにもたびたびでかけた。青春を取り戻した感じ。

B強敵の出現:
    勉強モードで入学したその日、私は隣のクラスのドイツから来た青年にすっかり
  魅入られてしまった。
   彼は音楽関係者で、将来オペラを上演するためにイタリア語を勉強しに来たという。
  一目惚れという言葉は、まさに今の私のためにある。
  「この思いを彼に伝えなければ一生後悔する。」と直感した私は、宿舎の門番のお兄ちゃんに添削を
  頼んで(にやにやしながらもお手伝いしてくれたのだ。)手紙を書き上げ、思いのたけを伝えたのだった。

続く

注1)本人いわく「私は美人ではない」と。でも美人であることは私が保証します。−Signora Forse

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