ジロベェの場合

 我が家の珍獣、三匹のオノコ共(彼らから見れば、何をしでかすかわからない私こそ珍獣でしょう。)のうち、ベネちゃんのホームスティ

 によって一番いい影響を受けたのがジロベェでした。この点において私は本当にベネちゃんに感謝しています。
 

 ベネちゃんがもうすぐ来るという頃に、ソクラでスがジロベェに「おい、ジロちゃん、大変だよ。イタリアから女子学生がホームスティに来るんだって。

 知ってたか?イタリア語を勉強しなきゃならないぞ!!」 と言ったとき、彼は「お母さんは何でも勝手に決めるからね。」と白けた様子でした。

 (うちのオノコ共はきわめてコンサバだから、相談するだけ無駄だと思っていたし、この家はソクラでスと私の家なんだから、夫さえ承知してくれれば

 問題なしと思っていた私。)
 

 ジロベェは「お母さんが友達を呼ぶからと言って僕が反対したことある?なのに相談する必要なしなんて、僕は彼女がいる間

 家出するからね。」などといいだしました。(うーん、少しばかり専横すぎたかしらん。)

 
 でも、結果として、ベネちゃんのことを一番かばったり、頼まれたこと以上のことをしてあげたのは彼だったのです。

 珍しくもご飯のあとまでリビングに残ったり、私が寝込んだ折りにはベネちゃんと一緒に餃子を作ったり、ベネちゃんが撮ってきたデジカメの映像をCDに

 焼いてあげたり、滞日アルバムに我が家の様子を付け加えてあげたり、私が留守の時などお昼をつくって食べさせたり。
 

 ベネちゃんの話によると、彼女の周辺のイタリア男性はほとんど家事をしないそうですから、日本男子の優しさを見てびっくりしたかもね。

 (北部の男性は南部男性ほど男尊女卑ではないといいますし、結構料理もすると聞いてましたが、家とか地域によって差があるようです。

 私が悪妻のせいで、わがやのオノコは掃除洗濯なんでも抵抗なくやります。でも、これが普通の日本男性だと言えるかどうか。)

 彼女が来たとき、まず最初に、私は「うちの家族を見て、標準的な日本人はこうなんだと思わないこと。」ジロベェに至っては「ホント、うちの人は変な

 人ばかりだからね。」と彼女に説明してましたが。
 

 彼は今風の男の子ではなく、まさしく、Old fashionedな人間で、人嫌い、電話嫌い、メール好き。着るもの、黒ばかり。人混みがきらいで、電車に乗らず

 都内ならたいていのところへ自転車で行く。音楽だけは現代嗜好。ギター、フルート、バイオリンを操る。こんな彼がベネちゃんの一番の理解者

 になり、なるだけやさしい日本語で対話をしたり、イタリア語、英語の辞書を駆使して、不明単語を説明したり兎に角親切でした。
 

 私とソクラでスは、彼の意外な一面(案外バランスのとれた人間なんだ)を発見して、びっくりするやら嬉しいやらでした。ホームスティが親である私たち

 の知らなかった彼の別の側面をみせてくれたのです。
 

 ホームスティを受け入れることの効用の一つとして「うら若き女子学生が見も知らぬ国に一人でやって来て、ホームスティするのを見たら、うちのコンサバ

 男達の考えも変わるかも知れないから。」と言ったとき、「だいたいお母さんが考えることなんて、そんなことだろうよ。でも、その手にはのらないからね。」

 と彼は苦い顔でしたが、今は以前とことなり「僕も留学してみようかな。」といい方向に考えが変わって来たようです。アリガタヤ。感謝してますぞ、ベネちゃん!!

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