ホームスティ受け入れ顛末記(ベネちゃんとの74日) その1

1,楽天家同士の出会い

    ベネツィア大学日本文学専攻の女子学生が書いたホームスティ先募集のチラシを読んだのは昨年の3月の上旬、日伊協会の掲示板上だった。

    事情があって5月まで授業を休んだ私が、再び日伊協会に通いはじめたとき、そのチラシは、まだ張られたままだった。

    かねてから、事情さえ許せば、イタリアからの学生を家庭に受け入れたいと考えていた私は、家族に相談もせずに「他に申し出がない場合

    我が家へ来てもいいです。」とe-mailで書いてしまった。

    相手がどういう人かも知らず、OKを出してしまった私。

    何の保証もないまま、私という人間を信じてくれたベネちゃん。これはもう楽天家同士といわざるをえないでしょうね。









2,夫を説得する方法(どの家庭にも通用する方法ではないと思います。−念のため)

    海外生活経験がある人をのぞいて、ホームスティを積極的に受け入れる亭主はいないのではないだろうか?

    (我が子が交換留学する場合をのぞけば。ちなみに我が家のメンバーは全員海外生活の経験がありません。)

    こういう場合、正面攻撃をしても撃破できる可能性はきわめて低いと私は思う。

    私の場合は、ちらちらと情報を小出しに漏らすという作戦をとりました。

    第一弾

    「ベネツィア大学の女子学生が東京の便利なところでホームスティしたがってるんだって。イタリアの大学生はとても良く勉強するんだって。

    入るのは簡単だけど、勉強しないと卒業できないから。」云々。まず、ポジティブな情報を注入する。

    第二弾

    「例の女子学生、まだホームスティ先が決まらないらしいので、他に申し出がなければ来てもいいですって書いちゃったけど、もっと条件の

    いい家が見つかると思うよ。」

    第三弾

    「他に申し出があったらしいけど、うちに来たいといってるの、でも私は料理が下手だし、子供は男の子ばかりだから、もっと待ってみたらと

    かいといたわ。」

    第四弾

    「料理下手でも、男の子ばかりでもうちがいいって言ってきたけど、来日したらどこに連れて行けばいいかしらね。」

    「そりゃ、京都、奈良にお連れするんだろうな。」ここまで来ると彼が了承したと私が思ったとしても致し方ありますまい。

    第五弾

    ところが、いざ来日が近づき、話が現実味を帯びてくると、色々がちゃがちゃ騒ぎ出すのが世のお父さんなのです。

    「おれはうちの中ではくつろいでいたい。他人が家にいたらくつろげない。第一、ランニングとステテコで過ごせないじゃないか!」

    「某女流作家みたいなデカくてブスがきたらどうする?」(ベネちゃんは美人じゃないよと言った途端の反応−本当はとてもきれいだが−

    特に笑顔が−fotogenicではない。インテリだから構えてしまうためだろう、私のように?)

    「どんな子が来るか保証がない。渡した鍵を人に貸してソヤツがコピーしたらどうするんだ?」

    第六弾

    この段階で、来日までの日数は一月を切ってましたから、結局今から断ったら(嘘も方便で断ることはできただろう)先方が困る。

    というわけで、彼女はめでたく(この顛末をしらぬまま)来日したのでした。

    ま、亭主の言うことにも一理ありますので「イタリアの学生はよく勉強し、良識があると信じて受け入れるのだから

    期待を裏切るようなことをした場合には退去していただきます。」旨事前通告はしました。
 

    なお、後で聞いた話では、日伊協会には同様の申し込みが沢山くるそうですが、ある程度保証できる人物の広告しか張りださないそうです。

    (ただし、当人同士の交渉できめてくれということで何かあっても一切責任はとらない由。ベネちゃんの場合は日伊協会法人会員の在伊日本

    人支配人の強力な申し入れがあり、掲示をせざるを得なかったそうです。)

    尚、我が家の夫(通称ソクラでス)は、昔から大のラジオ講座ファンで、説得の結果、「受け入れられる家庭が率先して受け入れるべきだ」と

    了承してくれたのでした。

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