イタリアへ行かないと見ることが出来ない物の一つがフレスコ画−最近は壁面ごとはぎ取る技術もあるらしいが。
高校時代に転校し、化学を学び損なった私ですが、フレスコ画が何故頑丈なのか、調べてみました。
1)フレスコ画は漆喰が乾かぬうちに描く。顔料は貴石の粉末などで耐アルカリ性が強いものを選ぶ。
2)顔料は漆喰の表面に付着するのではなく、漆喰の中にしみこんで、漆喰の中に閉じこめられる。
3)乾いた漆喰は、原料の石灰岩と同程度の硬度で顔料を閉じこめる。漆喰は空気中の炭酸ガスを吸って硬化する。
いわば、フレスコ画は人工的に作り出された絵入りの石のようなもの。
なのにです。フレスコ画の保存度に差があるのは何故?
一番保存度が良いのは・・・・・・リッカルディ宮殿の中のゴッツオリ作「三王礼拝図」
ビロードのタピストリを見ている様です。美しい。500年も前に描かれたとは思えない。
現在でも庁舎として使われている建物の一角にあるので、庁舎に紛れ込んで「これこれ!」
と怒られる恐れがありますが、あの美しい色合いは必見でしょうね。
一番保尊度が悪いのは・・・・・・パドバのスクロヴェーニ礼拝堂のジョット作のフレスコ画。堂内は非常に蒸し暑い。
制作原理からすれば、湿度は保存度に関係しないと思うのですが。方角によって
保存状態が違っていました。でもラピスラズリの青、金、赤など純色で明快に描かれた
あの壁画の美しさ、もっと涼しいときにもう一度見てみたい。双眼鏡持参で。
修復された壁画達・・・・・・・・・・ミケランジェロのシスティナ礼拝堂の壁画はろうそくの煤の他、加筆(裸体に衣を着せた)の
せいで汚れたといわれている。乾いた後のフレスコ画の上にかいたものは表面に付着して
いるだけだから耐久性は低い。(加筆部分は洗浄で流しさることができる。)
先の大修復の結果、従来男性像と思われていた絵が女性像と判明。ミケランジェロの描く
女性はマリア像以外筋肉隆々のものが多い−penso cosi)
ブランカッチ礼拝堂のマザッチオの「楽園追放」、ベアト・アンジェリコの「受胎告知」は1966年
11月のアルノ川大洪水(場所によっては6mの高さまで水が来た)で痛めつけられ、修復
されています。これらの修復が絵画修復技術の飛躍的発展を促したとか。
「受胎告知」のことは今思い出しても鳥肌が立ちます。その時も総毛だったのですが。
大天使の顔は至福のシンボル。これも必見でしょうね。
「最後の晩餐」・・・・・・・・・・・・・はフレスコ画ではない。テンペラ画に属し、壁の表面に付着している絵である。じっくり型の
彼は描き直しが困難なフレスコ画が苦手で、テンペラ画の保存性をあげるために、色々な
絵の具を発明したがフレスコ画の堅牢さに及ぶそれを作ることはできなかったらしい。
参考資料:NHK人間講座、フィレンツェ美の謎空間 & フレスコ画の制作(丹羽洋介著−美術出版社)