本当のイタリアはシチリアにあった。

           イタリアは南北に長い国であるが、南下するに従って、オレンジ、レモンの果実や

花咲き乱れ、色鮮やかに変化する。そして最南端の長靴で蹴っ飛ばされている島が

シチリアである。ミラノ人から見れば、そこはもはやイタリアではなく異国である。
 

地中海のど真ん中に位置するため古来より幾度となく侵略、征服され、雑多な

文化が入り混じり独特の味わいがある。ギリシアの神殿、イスラムのモスク、

エジプトのオベリスク、スペインの音楽アラブの要塞、北欧バイキングの足跡まである。
 

しかし、地理的な近さもあり、ギリシアの影響を一番強く感じる。それは

アグリジェントに行きコンコルディア神殿の小高い丘の上に立つとはっきりする。

地中海を背後に街並みを遠望する、この丘はアテネのパルテノン神殿を思い出させる。

建築物としてはこちらがより完全に残っているし、紺碧の空はギリシアと全く同じ色を

している。赤茶けた禿山にレモンとオリーブ、それにアーモンドの木があり、これも

ギリシアのパルテノンの丘と同じだ。
 

 ピアッザアルメリーナはクルマがないと行けない不便なところにある。街からさらに

数キロ走ると古代ローマ時代の貴族の別荘跡がある。ここにはイタリアで最古の

モザイク芸術が、最高の状態で残っている。噴水、浴室、プール、食堂などがあり、

その壁面、床がモザイクで飾られている。猛獣と戦う人々や、日々の暮らしを題材に

したもので、ビキニを着た女性の絵まである。当時の豪華で贅沢な生活が偲ばれる。
 

 さて旅に疲れたら温泉に寄ってみよう。シャッカはシチリアで最大の温泉場で、

湯治用の豪華ホテルがある。泥(Fango)を塗るエステ、温泉を飲む治療など長期

滞在する人もいる。硫黄の匂いが強く鼻につくがよく効きそう。
 

 トラパニは塩の名産地で有名。アフリカの香りがする海を臨む港の突堤にリニーの塔

がある。ここの屋上からのパノラマは素晴らしい。地中海の色は濃い群青色で

映画「グランブルー」の海と空が体験できる。眩しすぎてサングラスは必携。
 

 シチリアのよいところはパレルモ、カターニャ以外の町は小さく、都会の喧騒や

公害もないことだ。空と土と緑の色彩対比が強烈で、その自然に溶け込むように

表情豊かな人々が交じり合って独自の空間を作り、時間がゆったりと流れている。

 ここにいるとベネチア、フィレンツエやローマも不潔な街に思えてくる。ここに

は有名ブランドのブティックも高級レストランもないが、本当のイタリアの姿が

あるように思える.

 
「ナポリを見て死ね」という格言があるが、私はVedi Sicilia e poi muori ! 
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