霧のミラノ

           12月に入るとミラノもいよいよ極寒を迎え,昼間も0度以下(Sotto zero)の日が

多くなる。近年は温暖化のためミラノ名物の霧は10年前と比べ少なくなったが、

それでも11月中旬から出始める。リナーテ空港は霧のため飛行機の遅延や空港閉鎖

が多くなる。霧の季節が始めには高速道路で100台以上の大玉突き災害事故が発生

して新聞を賑わす、そうして始めてみんなが慎重に運転するようになるのが

年中行事になっている。
 

先行車の赤いテールランプが2つ認識できるだけで、

ほとんどミルク風呂に入っているような濃霧でも100km以上で飛ばしている。

べっとりと均一に濃い霧の場合はまだ安全である。先行車のランプを頼りに一定

のスピードで走れる。恐いのは霧が均一でない場合、例えば薄い霧の場合でも橋梁

の上に、Banco di nebbiaと呼ぶ濃い霧の塊が居座っている。これに突っ込んで

急ブレーキを踏むと後続のクルマにオカマされることになる。
 

ミラノからフィレンツエへ向かう場合山間部が多く、トンネルも多い、しかもトンネルの

出口がカーブしており、そんな場所にBanco di nebbiaがドカンとあると、

完全にそのまま谷底に大ジャンプすることになる。
 

 12月に入るとクリスマスの電飾がミラノの商店街に吊るされる。クリスマス

ギフトを求めて、夕方からウインドウショッピングの人々で賑やかになる。

クリスマスといえばクリスマスツリーだと思っていたが、カソリック教国の

イタリアでは伝統的な「プレゼピオ」を飾る。これはキリストの誕生のストーリー

をジオラマで再現したもので、馬小屋にキリストが生まれ聖母マリア、父ヨセフ

などと牛、羊などの人形を飾る。
 

ローマのバチカンには大きなプレゼピオが出現するが、ミラノのドオモ広場には、

近年は10メートルもあるクリスマスツリーが飾られる。最近は各家庭でもプレゼピオ

よりクリスマスツリーが多くなってきた。クリスマスイブにはレーズンが入ったケーキ(パネットーネ)と

七面鳥料理を家族で楽しむ。
 

日本のような喧騒はなく、深夜ミサに参加する人が

歩いているくらいで、静かにイエスキリスト生誕を祝う夜だ。

クリスマス当日もレストラン、ショップはクローズ、地下鉄も午後には止まって

しまう。タクシーもほとんど走らなくなるので、タクシースタンドにはホテルに

帰りそびれた観光客が列をなすことになる。改めてヨーロッパではクリスマスは

聖なる特別日であることを認識させられた
 

イタリア人に取って、年が改まることはあまり感慨深いものではない。日本は

      年末年始は帰省のためとUターンラッシュの国民大移動が

毎年繰り返されているが、こんな現象はイタリアでは考えられない。
 

イタリアでは大晦日午前0時には市中のいたるところで花火が打ち上げられ、

アパートの窓から、不要になった古い家具などを窓から投げ捨てる習慣があったが、

最近は危険なのでこの風習はない、それでも植木鉢とか水が上から落ちてくることがある。
 

元旦は休日だが2日からはもう仕事を始める事務所が多い。

1月6日はエピファニアの祝日、子供達は枕もとに靴下を置いておくと、

夜中にほうきに跨った魔法使いのおばあさんベファナが煙突から入ってきて、

良い子にはプレゼント、悪い子には石炭の塊をいれていく。この頃には石炭

の格好をしたお菓子が売られる。 

戻る