イタリアにはLavoro
Nero(黒い労働)という言葉がある。正式な労働契約に
よらないヤミ仕事のことだが、特に南部では蔓延している。日本人はお上が決めた
規則、法律なら不満があっても従ってしまうが、イタリア人は相手が政府であって
も不服、理不尽なルールには素直に従わない。
ある日こんなことがあった。近所の対面交通道路で交通封鎖ストをしていた。近所の商店主が
プラカードを持ってロープを張り交通を遮断しているのでその道路に面したロータリーは大混乱。
ストをしている理由はこの道路が一方通行になることが決まったらしいのだが、
そうなると売上が減るので、一方通行反対の訴えるためだった。
ミラノは昔のままの街並みで狭い路地が多く、一方通行が多い、それが地域の住民のエゴで
突然変更され、昨日まで東向きの一方通行は今日は正反対に西向きの標識に
変わっていたりする。
通いなれた道路が突然変更されるので事故も起こりやすいし、道路経路が複雑になってしまって、
一方通行だらけで目的地に到達できないパズル状態になってしまうこともある。
脱税はイタリア人のほぼ全員が何らかのカタチでやっているものと思われる。
もちろん摘発されることもあるが、イタリア人は脱税することに誇り(?)に思っている節がある。
私のアパートを借りる時には二重契約をさせられた。表契約は税務署
に提出する金額の少ないもの、もうひとつの裏契約書には実際に支払う
高額家賃のもので、約2倍の金額差があった。支払の際は税務署届出金額分
は小切手で、ヤミの部分は現金で支払わされた。領収書も最初は出せないと
大家は主張していたが、結局「今月分家賃受領しました」とだけ記載して
金額の明示していない確認書のようなものだった。
一方政府もしたたかである。ある時、過去のある時点にさかのぼって
銀行預金残高に一律3%の臨時特別課税をすると発表した。
翌月の残高報告書にはしっかり引かれていた。
一部の政府高官と政治献金しているお金持ちだけは、事前にこの法律が
リークされていたので、外国に資金を移動したというスキャンダルも
発覚した。
戦後、左翼政権が続いた頃に労働者優遇の法律を多数乱発してしまった。
例えば国鉄職員になれば35歳で繰り上げ退職を迎え、年金受給者になれた、
50歳以上で仕事をしている人は統計上は50%を切るが、実際には仕事をして
税金を払っていない人も多いだろう。
「国滅びて民栄える」がイタリアなら「国栄えて民滅びる」は日本の
ことだろう。(8/Dec/2000) 戻る