走る観光客は枕銭を置く。

ミラノのモンテナポレオーネ、ローマのコンドッティ通りで日本人観光客が朝の早く

から有名ブティックの前に行列する。おそらく「ヨーロッパ5カ国1週間ハイライト

ツアー」のほとんど半分以上は移動のために時間を取られる観光客だろう。
 

最近は韓国人も多い。手には雑誌から切り抜いた人気商品の写真を貼ったノートを

持ち、開店と同時に店内になだれ込み、店内を走る、走る、大声で仲間と話す。

服装はジーンズにスニーカー、ウエストポーチにリュック、ほとんどハイキングか

山歩きの姿。
 

ミドルクラスのアメリカ人とかドイツ人も団体ツアーでよく旅行して

いるがもっとまともな格好をしている。彼らは本来の観光、即ち名所旧跡を周遊する。

これが正しい観光客の姿ではないだろうか。
 

日本人の観光客は観光は二の次で、買い物こそが最重要な目的だ。

買うものは最近のファッション雑誌に掲載されたモデルばかり、全員がその商品

目当てだから、特定のモデルがすぐ品切れする、そして怒る。

私がブランドメーカーの社長なら、毎月日本からファッション雑誌を取り寄せ、

掲載されたモデルを大量に作り店頭に置くけどね。
 

店員に断りもなしに商品に触りまくるのも日本人の特徴です。日本語で値切る。

目当ての商品がなければ、小物で値段の安いものを手当たりしだい買う。
 

有名ブティックの店員の給料は大体150200万リラくらいです。

彼女らは給料は7〜10万円でも有名ブティックに勤めるからにはプライドが

ある。その店員の相手をする客が山歩きの格好で店に入ってきて何百万リラも

一度に買い物する。そんな客と毎日、毎日応対していれば、どんな感情の変化が

彼女らの心に現れるか心理学者でなくても容易に想像できる。一番日本人を軽蔑

しているイタリア人がいるとしたら有名ブティックの店員だろう。
 

ミラノは大きなホテルは少ないので、日本人ツアー客が泊まる大型ホテル

は限られている。時間がもったいないのかホテルの中でも走っている。

エレベーターには女性を押しのけてわれ先に乗る男性。買い物に時間を

取られ、着替えの時間もなく、ウエストポーチにスニーカーでディナーに

行ってしまう。夕刻のロビーでは昼間に買った戦利品を広げ、仲間と品評会

を始めている。公衆の面前で財布を出してお金の貸し借りの清算をしている

人もいる。カップラーメンを出して食べ始める人までいたりして傍若無人の

振る舞い。間違ってもブレラ美術館の作品について語りあっている人は

いないだろう。
 

彼らはベッドにどういうわけか枕銭を必ず置く。あの不思議

な風習は誰が始めたのだろうか? 語源からいって江戸時代に日本にあった

風習だったのだろうか? ピローマネーとしたり顔で言う人もいるが、そんな

言葉は辞書にはありませんぞ。英国人に聞いたら、夜のお相手のオネーチャンに

渡す金かと言われた。日本人だけの変な習慣はそろそろ止めましょう。
 

昭和40年代の一般海外旅行が解禁された頃の旅行ガイドブックに枕銭が必要

と出ていた。さすがに最近のガイドブックには出ていない。

チップというものは相手に手渡さないと意味がないのです。

これではホテルマンに馬鹿にされないほうがおかしい。(23/Nov/2000) 戻る