日本は安全すぎる?

確かに日本より治安は悪い、というより日本の治安が世界標準と比較して良すぎる

のだ。イタリアの銀行ってみよう。入り口には銃を持ったガードマンがいる。

手提げカバンなどは持ち込めずドアの前のロッカーに入れる。2重ドアになっていて

一度にひとりしか入場できない。二重ドアの内側には金属探知機があり、傘など

持って入るとブザーが鳴る仕組みになっている。
 

内部のカウンターは厚い防弾ガラスで仕切られている。現金輸送車は軍隊の装甲車なみの

装備をしており、厚い鉄板で覆われ、銃撃戦になった時に備えて、銃眼のついた窓まで

ある。現金輸送車が銀行に到着すると、ちょっとした儀式が始まる。

銃で武装したガードマンが歩道を封鎖して、ワイアーを銀行の入り口まで張り渡し、

そのワイアーにジュラルミンの現金ケースをロープウエウエイのように通して運び入れる。
 
 

イタリアのアパートはドアに鍵が3つ以上付いている。その内一個はダミーも

あるが、メインの鍵はかなりデカイ。それを3回転ほどするとドアに内蔵された井桁

のようなパイプが壁に食い込むようになっている。また木製のドアにも鉄板が

サンドイッチにされている。
 

これだけ厳重にしても、きれいに芸術的にくり抜かれて

泥棒に入られる。ただ強盗はほとんどない、空き巣が一般的で、泥棒はプロだから

何ヶ月前から家族の動向を調べあげ、誰も居ないときにあっという間に仕上げて

しまう。
 

銀行の前には軽機関銃を持ったガードマンが張り付いている。銀行強盗も

時々新聞を賑わす。女性警官も腰にピストルをぶら下げている。麻薬常習者に街中で

ピストルを突きつけて身体検査している場面も何度か見た。実際麻薬常習者は多く、

夜中にクルマを運転していると、突然、ふらふらと目の前に飛び出してきたり、

建物の影で注射を打っている若者がいる。
 

金のない麻薬常習者が、注射器をまわし打ちしてエイズに感染する若者があまりにも多いので、

ある麻薬患者がたむろする公園では市当局が無料で注射器を配布し、賛否両論がおきた。

実際、公園に行くと注射針が沢山落ちている。
 

70年代には子供の誘拐が流行した。それも10万円くらいの小遣い稼ぎのために

不良少年がやる場合がほとんどで、その頃のなごりで、今でも小学校低学年までは必ず親が

学校に送り迎えする習慣になっている。幼稚園児も両親以外の人間が引き取りに行っても

絶対に渡してくれない。
 

街中で子供どうしで遊んでいる風景はミラノでは見られない。

90年代初めには臓器売買に関わる誘拐のうわさを何度か耳にした。

日本人の女性がとあるショップの試着室に入ったまま出てこなかったとかスイス国境で

子供が詰められたコンテナー車が税関の検査で発覚されたとか。
 

知り合いのイタリア人社長の専用車は外見は普通のメルセデスだが、

重量は2.5倍ある。厚さ1センチほどの防弾ガラス、車体には防弾用鉄板が入って

おり、車内には秘密のボタンがあり、それを押すと内部の会話が自動的に警察署に

無線で届くようになっている。また緊急サイレンも付いている。ピストルの携帯許可

も取っている。
 

恐ろしい話はいっぱいあるが、普通に住んでいる分には問題はない。

日本と違って外出する時には、どうしても危険に対して構えてしまう。ただそれが

日常の生活で習慣になると、別に苦にはならない。地下鉄で口を開けて眠りこける

ことのできる日本ほど安全でないだけで、これが世界の常識でしょう。

(7/Oct/2000) 戻る