テレビの留守録は不可能

日本人はイタリア人の時間がルーズなことはよく知られている。しかしイタリア人

の立場から見ると日本人は時間の正確さに病的だと思っている。

 

新幹線のあの正確さ、地下鉄は3分間隔の列車の時刻表がありそれが時間通り運行

されていることなどイタリア人は日本へ来るまで信用してくれないだろう。

 

イタリアは時間にルーズなのではなく寛容なのだと解釈したい。

約束の時間が10〜30分遅れても怒ってはいけない。相手は隣の部屋でコーヒーを飲んでいる

かもしれない。イタリアでは秒とか分の単位で物事を決めること自体不可能なのだ。

そんなに正確にする必要がどこにある?と言うのが彼らの言い分だ。正確なのは退社

の時刻くらいだ。よく列車が遅れると言われるがこれはちょっと事情が違う。

 

ターミナル駅からの出発は正確だ、時刻通り発車する。ただし、次の駅以降は保証の

限りではないだけのこと。地下鉄の駅には時刻表がないから、これは文句をつけられ

ないだろう。1分後に次の電車が来る場合もあるし20分待たなければならない場合

もある。乗り換えのバス停でバスを待っていたが一向に、目的のバスが来ない、

確かめたらストでバスは運行されていないと!路線別に労働組合が分かれてていて、

動いている路線とストの路線があるのだ。

 
 

それは1月の霧の深い氷点下5度の日であった。アポイントも1時間も遅れればさすがのイタリア人も

気にはする。しかし時間を守れなかったことを絶対に自分の責任にはしない。交通が混んでいた、

親父が急病で、クルマの故障で、地下鉄のストで、とあらゆる言い訳をする。

 

別の項で書いたがテレビの時報からしていいかげんだ。ましてやテレビの番組の進行

もアバウトこの上ない。新聞の番組表は目安にすぎない。従って、テレビ映画の録画

なんてイタリアでは不可能だ。番組の10〜20分の遅れは当たり前だし、番組が

早く終わりすぎて画面が真っ白のまま数分過ぎる時もある。

 

テレビの時報は各局ともバラバラ、どの局が一番正確かこれは基準にするものがないから誰もわからない。

もしイタリア人が正確に時間を守るようになれば、あのミラノファッションの素晴

らしいデザインの服とか家具、美しい自動車は生まれなくなくなると思う。

時間、期日厳守でデザイン、創造的な仕事をしている日本人デザイナーは100年後

もイタリアに追いつけない。時間にアバウトなのはイタリア人の美点であり欠点では

ないと私は思うのですが。(10Nov2000) 戻る