フェルメールの

夏のアムステルダムがあんなに観光客でいっぱいとは思わなかったアンネの

日記の隠れ家を見学してから、ホテルを探したが、どこも満室で見つからず、

ハーグまで行くことにした。クルマでの旅行はこういう場合便利だ、泊まるところ

がなければ隣街へ行けばよい。ハーグも大きな街で国会議事堂をはじめ、オランダ

の主要な官庁が集まっており、実質的な首都と言える。アムステルダムの喧騒さは

なく、静かで静寂な街だった。また有名な美術館が6つもあるし、本物の

ハウステンボスもここにある。幸い国会議事堂に面した大きな池のほとりにある

ホテルに投宿できた。翌日はホテルから一番近い、マウリッツハイス美術館へ

行った。昔、教科書で見覚えのあるレンブラントの絵もあったが、フェルメールの

「青いターバンの少女」を見てその場にくぎ付けにされた。小さい絵であったが、

振り返る少女のミステリアスな瞳とターバンの青が強烈に印象付けられた。

その青色はとても350年前に描かれたものとは信じられないくらい新鮮な発色

をしていた。あの青は粉末状の天然ウルトラマリンが使われているらしい。

フェルメールは現在では30数点の作品しか残していない寡作な画家だった

らしい。43歳の生涯を閉じてから有名になり、贋作事件とか盗難事件もありその

ミステリアスな歴史にも興味が引かれる。レンブラントとかその他、その時代の

画家の作品もあったが、暗く、複雑な図柄が多い。フェルメールの絵はどれも左上

から来る光の陰影が微妙なタッチで、絵柄はシンプルに描かれており、人物と静物

が非常によくバランスを考えた構図になっている。フェルメールに興味を持ったの

で明日は彼の故郷デルフトへ行くことにした。アムステルダムが東京ならば

デルフトは京都のような感じの古い街で、まるで中世にタイムスリップしたようだ。

フェルメールの「デルフトの眺望」のままの運河が縦横に走った街並みが残って

いる。有名なデルフト焼きのお皿とデルフトブルーのタイルを買った。ここまで

来たら、風車で有名なキンデルダイクまで足をのばしてみよう。オランダは

イタリア語でPaesi Bassiと呼ぶ。文字通り「低い国」であることが実感できる。

世界の国は神が創造したが、オランダはオランダ人が作ったと言われるように、

干拓によって人工的に国土は広げられ、風車は海水を排水するために活躍した。

国土すべてが海抜ゼロかそれ以下の土地で、街を出ると地平線が見え、全く平面で

山とか坂道がない。それで自転車が発達した。自動車道の横に並行して必ず

自転車道が設けられている。オランダの空は澄み切っているが、

イタリア地中海気候の空の色とは違い、どこか寒々とした感じがする。

あのフェルメールの青もそんな感じがした。(4/Nov/00) 戻る