ミラノのビートルズ (10/Sep/2000)

その古い白黒写真を見たのはブレラ通りの古いバールだった。ビートルズの4人が

ドォウモ大聖堂の屋根の上でポーズを取っている。今年はビートルズが解散して

30年だから、多分35年以上前だろう。ドォウモはミラノの中心にそびえる

ゴッシック様式の巨大な建築だ。イタリア広しといえど、教会の屋根の上に上がれる

のはこのミラノのドォウモ以外知らない。晴れた日には北イタリアアルプス山脈が

遠望できる。特に夕方、真っ赤な夕陽が沈む頃が最大の見所だと思う。
 

ミラノでビートルズは演奏公演をやったのだろうか?イタリアの友人に聞いてみた

がよくわからない。ミラノはファションだけでなく、結構、有名なミュージシャン

がいくつかの名演を残している。チェットベイカーのin Milanoの演奏CDには彼の

ハスキーボイスが残されているし、ジャズピアノのキースジャレットは5年前に

スカラ座でソロコンサートで絶賛を博した。そのライブCDライナーノーツに

キース自身がこんなエピソードを書いている。
 

「スカラの演奏が終わった後、楽屋に若者に連れられて、60歳台の老人が訪ねて

きた。てっきり、若者が私のフアンでおじいさんか誰かがついてきのだと思った。

ところがそうではなくて、この老人は25年もスカラ座専属で指揮者の

アシスタントをしてきた人物だった。
 

彼は、『長年、スカラで数え切れないオペラ、オーケストラの名演を聞いてきたが、

こんなに感動した音楽は初めてだ』と、目に涙をため、英語の通訳を買って出た若者を通して

私に、その嬉しさを伝えにきてくれたのだった。

私と妻は彼に感謝し、音楽を通して人を感動させられる喜びに、私もまた神に感謝したのだった。」

戻る