ラテン流ドライブ(22/Sep/2000)

   ドイツのアウトバーンを走るのは快楽である。世界で唯一の制限速度無制限、

大人のマナーが守られているから事故は少ない。日本では一億年経っても、

作れないと断言できる。技術的にではなく、文化を具現化している道路は!

明快な高速道路である。最左のレーンはポルシェとか、メルセデスの大型車が

200キロオーバーで、真中のレーンは150キロの一定速度で走れると

自己判断したクルマ、最も右側はキャンピングカーを引っ張ったクルマ、や

小型車、それでも100キロ以下ということはない。
 

 東欧が開放された頃、一番左側をプラモデルを大きくしたようなトラバントが

もうもうと煙を吐きながらよた走りをしている悲しい姿を見た。政治体制の違いが工業技術の差に

端的に表れた見本である。
 

ミラノからローマへ続く高速道路A1は太陽道路と呼ばれている。見通しが

よく一直線の部分が多いのでスピードは出し放題。右側の追い越し車線を

メルセデスやBMWが専用レーンのようにぶっ飛ばしている。一応最高速度は

130キロと定められているが、誰も守っていないアウトバーン状態であるが、

貧乏人のクルマ、パンダがアクセルを床まで踏んで、追い越しレーンを

といっしょに走っているのはイタリアならではの光景である。
 

パトカーも走っているが、追尾して速度違反車を捕まえるという芸当はできない。

何故かというと、イタリアのパトカーには速度測定器が付いていない。

あなたは何キロオーバーですと証拠を示せない。その代わり高速道路には

ところどころレーダーカメラが取り付けられており、大体は陸橋の橋げたの

下が多い、これで撮影されると、後日罰金通知書がクルマの所有者に届く

システムだ。このカメラ装置は電話ボックスほど大きい箱なので遠くからも簡単

に判別でき、誰もがその前だけスピードを落とす。またダミーも結構あるので、

これはクルマ雑誌の付録なんかで高速道路別の判別リストが出回っているので

本物だけ気をつけておればよい。このレーダーカメラもクルマの前面を写す

のではなく後部をナンバープレートと共に撮影する、何でもプライバシー尊重

のため、顔を写さないのだとか。そういうわけでイタリアでスピード違反で

捕まることはまずない。高速では150kmが平均巡航速度だろう。
 

時々その横をビュンとドイツ人の運転するBMWがものすごいスピードで追い抜いて行く

、完全に200kmオーバーだ。本国ではあれだけ交通規則を守っているのに、

イタリアに来るとイタリア人同様クレージーになる。イタリアは95%以上が

マニュアル車だ。イタリア人はなぜオートマチック車を買わないのだろう?
 
 

イタリア人に聞いてみてもよくわからない。多分イタリア人は運転そのもの

が好きなのと、スピードと燃費はマニュアル車が有利と信じている節がある。

フィアットが発売した初期の頃のオートマ車が故障ばかりで信頼が

おけなかったと言う人もいる。お隣のドイツはほとんどオートマ車

というのに。
 

ヨーロッパのイタリア以外の国でレンタカーを借りると約款に、

イタリアには入国禁止と注意書きがある。それだけ盗難が多い証拠と言えるが、

実際に盗難は日常茶飯事だ。10年くらい前までカーステレオは装置本体が

着脱できるようになっていた、路上駐車する場合、必ずカーステレオは持ち歩く。

レストランに来る多くの人が何故弁当箱を提げてくるのかなと思ってよく見たら

これだった。さすがに最近のカーステレオはスマートになって、前面の操作盤

だけカードのように外れ、胸のポケットにも入るようになった。これがないと

盗んでも使えない。道路沿いの路上駐車のハンドルをのぞいてごらん、

パンダなんかの安物のクルマにも10kgはあろうかと思う鉄鎖がぐるぐる巻き

にしてある。
 

ある朝アパートの前に停めてあるクルマの高さが低いなと思ったら

タイアが4本、きれいになくなっていた。盗難予防の振動するとサイレンがなる

予防装置を装備しているクルマが多いのだが、風がほとんどないミラノで、

たまに大風が吹くと路上駐車のクルマがいっせいに大合奏を始めることがある。

サカリのついた猫軍団の泣き声より始末が悪い。

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